カテゴリー: 審判のつぶやき

競技者が見えているもの、審判が見えているもの

私は現役の競技者として、また現役の審判員、インストラクターとしてフィールドやその周辺に立つことがありますが、やはりそれぞれにおいて見えるものが違うのだと、最近あらためて感じます。

例えば、競技者としてファウルで試合が止まったとします、その際にファウルを受けた側が報復とまではいかなくとも、相手競技者が倒れている頭の上を足で抑えたとした時、私は間違いなくその足を通した選手に対して抗議します。

で、そういう時に別へフォーカスが行って、見えていない審判が時に、問題が起こることがあるのです。

審判としては再開をするためにファウルの一件が落ち着いたと思ったら、再開方向を確認するなどをするのですが、その時に火種が残っていたとしたら、見逃すこともあります。

競技者としては火種が残っているということは、双方に納得していない事象があるわけですから、一触即発なのですがその状況を審判がわかっていなければ見えなくなってしまうこともあります。

これをどうするか・・・といえば、経験を増やしていくしかありません。

競技者がどういうストレスを抱えているのか、どの競技者がストレスを抱えているのか、そういう部分を気付いていくことによって、試合の進行をスムーズにする工夫をしていかなくてはなりません。

間違ってもその際に、思ったことをストレートに競技者にぶつけるようなレフェリーはありませんが、それも経験によって工夫をしてください。

レフェリーもストレスがたまるのは当たり前なのですが、レフェリーが熱くなって言葉を発するのはしてはいけません。

競技者からみて、レフェリーが100%全部を把握してくれることはないと思っている人がほとんどでしょう。

ユニフォームを引っ張られている、押された、抑えられた、蹴られた・・・などなど、少しずつストレスはたまっています。

同じことが続くと当然ながらアピールをすることになります。

つまりはアピールはストレスがあるからこそ起きるということです。

多くのレフェリーはアピールで見えていて軽いものは「見ているよ」と気付かせることがありますが、見えていなかった場合にはどうしているでしょうか。

私の場合ですが、プレーが止まっているときに競技者に対して「ごめん、さっき見えなかったけれど、どうだったの?なるべく見るようにするから。」と「相手によって」声掛けをするようにします。

そうして、次に同じ競技者がファウルを受けたような場合に見えている、もしくはきちんとファウルを取ることによって、レフェリーと競技者との間に信頼関係が生まれます。

それがコントロールの一種なのだと考えます。

もし万が一もう一度見えていないなんてことになると逆に全く信用されなくなります。

声掛けとはそれほど重要なことだと認識しています。

インストラクターとしては、アセッサーとしてレフェリーの振り返りをする場合があります。

試合が終了してレフェリーチームのその試合の振り返りを行い、良い点、悪い点から伸ばしていく部分、改善していく部分をレフェリー本人に気づいてもらうためのものです。

以前のように「教える」という方法は少なくなってきており、「気付いてもらう」ことが重要視されるため、実はインストラクターも難しくなってきており、そのための研修も受けています。

チューターリングなどの手法を使って、レフェリーチームにその試合を振り返ってもらうわけですが、気付いてもらうための材料を揃えても気付いてもらえない時にはストレートに「このシーンはどうだった?」と聞くこともあります。

その時に気を付けたいのが「見えているものが違う」ということでもあります。

インストラクターはフィールドの外から見ていますし、レフェリーよりも争点から離れてみています。

そのため極端な場合にフィールド外からはファウルに見えたものが、レフェリーの視点からはファウルにはならないものだったりすることがあります。

その見えている者の違いを意識しなくてはなりません。

同じように東京都の試合の多くは、アセッサーが一人でレフェリーとアシスタントレフェリーを見るため、アシスタントレフェリーのオフサイドのタイミングについて疑義のある場合が存在します。

しかし、何度も書いていますがフィールドで見えているものとフィールド外、特にアシスタントレフェリーにしか見ることのできないオフサイドラインについて、余程はっきりわかるものでなければアシスタントレフェリーが100%間違っているものは見極めることができません。

今のタイミングは微妙だったな・・・聞いてみようとなるわけですが、その時にアシスタントレフェリーへの声掛けは「〇分の×チームのオフサイドだったんだけれど、どう感じましたか?」と言葉をかけます。

それに対してアシスタントレフェリーから「100%間違いなくオフサイドです。一列目は間違いなく、二列目に出てきた選手も先にオフサイドの位置にいました」と回答してもらえばまず間違いがありません。

ところが「微妙だったかもしれません」という回答は多くの場合BADだと感じるわけです。

レフェリーは見えた事実を表現する必要があるわけで、想像力を働かせるのはジャッジまでの流れであったり、競技者の心情の部分で十分です。

それ以外は見えたものしか材料になりません。

だからこそJリーグでも誤審になったりするものが存在するわけですが、見えなかったものについては判断することができないのです。

・・・で、見えるように努力をしなさいという結論になるのですが、それはまた別の機会に書くこととします。

もう一点。

私は審判としてフィールドに立つ時と、競技者としてフィールドに立つ時と違うと言われますが、それは当たり前だと思っています。

審判は勝ち負けは関係ありませんが、競技者は勝ち負けを含めてこだわりがあります。

そのため審判としての自分を、競技者の時にあてはめられるのは嫌います。

私は競技者としてフィールドにいる時はファイターでしかありませんから。

荒木友輔氏、Chinaで笛を吹く

また、荒木氏が日本の新世代の審判を代表する人物で、まだ33歳であることを併せて伝えた。「試合を通じて、両クラブの対抗を盛り上げるという一貫した姿勢を保ち続けた。そして、ファウルの判定も速やか、かつ、的確で、双方の選手を納得させ、エキサイトするシーンを起こさなかった」と評し、この試合で荒木氏が見せたジャッジングは中国のサッカー界に「ハイレベルとはこういうことだ」と認識させるものであり、中国の審判に新たな手本が示されたと伝えている。

少々ほめすぎかもしれないが、評価されているのは良いことだと思います。

Chinaにおいてはまだプロリーグとしての歴史がJリーグに比較して浅いため、当然ながら審判の育成もまだ進んでいないという現実があるのだと感じています。

そんな中で日本人レフェリーとしてスーパーリーグで笛を吹き、基準を示すことができたのだとしたら、Jリーグ黎明期に欧州からきていただいたレフェリーの方々と同じ効果をおこしていただきたいと願う。

もっと頑張って審判やってみませんか?

アクティブレフェリーとして20年ほど活動させていただいていますが、そのご褒美を紹介させてもらいます。

アクティブレフェリーにならなければ経験できない試合というのがあります。

例えばU-18プリンスリーグや、より高いレベルの高円宮杯の審判などです。

もう二年以上前になりますが、私は将来的には日本代表の中心選手になるべき「久保建英」選手と一緒のフィールドに立ちました。

U-18のクラブユース関東予選でしたが、この試合はアクティブレフェリーで望んだとしても、きちんと割り当てをもらえるレベルにいないと割当してもらえないようなものです。

同じくJを目指すようなレベルの選手がいる大会はそうですし、地域リーグでJを目指しているようなチームの対戦にかかわることができるのは、関東リーグの審判となります。

大学も社会人も基本的に3級アクティブでしたら第四の審判員ということになりますが、規定としては2級じゃなくとも力があれば可能なのですから、若いレフェリーはどんどんチャレンジしてほしいと思います。

私もそんな中で現在Jリーグにいる選手たちと同じフィールドに何度も立っています。

久保君と並んでうれしかったのは、友人の息子でもある伊藤達哉と同じフィールドに立った時です。

今はハンブルガーSVから移籍がうわさされている彼ですが、中学二年生の時の三菱養和カップに参加していて、これも同じフィールドに立つことができました。

その後、柏ではあまり評価されることはなかったのですが、海外カップ戦でハンブルガーの目に留まり、デビューしたのはそう遠くない過去です。

アクティブレフェリーとして、体の準備、心の準備、頭の準備をした方のみ、「やりたい試合」を担当させてもらえることがあります。

それはレフェリーとしての喜びであり、20年やってきて振り返ると、よくやってきたものだと自分でも思うわけです。

残念ながら2級審判員となることはありませんでしたが、それでも東京都における重要な試合には審判として呼んでもらったこともありますし、プレ国体の審判員にも選ばれましたし、東京都で行われる全国大会にも、そして国際ユースにも担当させてもらうことができましたが、これは望んでも得られないことさえあるのです。

しかし、そういう場に呼んでもらうことのありがたさを感じています。

ぜひ、若い方で少しでもレフェリーに興味があるのでしたらチャレンジしていただきたい。

もちろん、子育てが一段落したお父さんにも、子供とは違うサッカーでのチャレンジをしていただきたいと思います。

そして、望む試合が担当できるような、そんなレフェリーがその中から生まれてくることを期待します。