カテゴリー: 審判のつぶやき

VARは善か悪か

のようなタイトルを書くとドラスティックな感じがするのですが、個人的にVARは使うべきだと思っています。

なぜなら「より正しい判定」を導き出すツールとして有用だからです。

しかしながら、昨日のアジアカップ日本vsベトナム戦でのふたつのVARによるノーゴールとPKの判定については意見があるのでブログとすることにしました。

昨日の日本のゴールに見えたシーンは、ハンドリングのファウルということで得点が取り消されました。

こちらは時間の経過を見ていないのでなんとも言えませんが(まだ仕事帰りのためテキストでしか見ていない)、もしキックオフが行われていたのだとしたなら、遅すぎるのではないかと感じます。

そして堂安へのファウルですが、こちらは問題が山積しています。

1.引きのテレビの映像でさえ「足を踏まれたのでは?」とわかる程度
2.踏まれた後足が当たったかについては議論が必要だが、一つ目の見逃しはどうか
3.PKに移行するまでのVAR判定までの時間が長すぎる

すぐにこの三つが出てきてしまうほどです。

まず1についてですが、あのシーンをPKととることができない主審とはなんなのだろう?と思ってしまいます。

確かにピッチレベルでどうかということはあるかと思いますが、では自分が競技者であったとして(しかもファウルした側の)もしあれがファウルと判定されなかったとしたなら、「助かった!!!」と思うレベルでしょう。

そしてVARじゃなければ判断できない主審ということであれば、あのシーン主審は何を考えていたのだろうか?と感じるのです。

3についてですが、VARの判断の精度と正確性がまだ低いということでしょう。

正確性についての議論は少ないと思いますが、精度・・・スピードが遅いということです。

かなりの時間が経ってから「今更PK」という判定だったように思うため、VARの練度が必要になるということなのかと思います。

つまりは1も3も審判員のパーソナリティーによるということになってしまい、結局人次第ということになってしまうのです。

そう考えると矛盾してしまうのですが、VARが悪にも見えてきてしまう部分があり、それはゲームの進行を無視してしまうため、いきなり有利、不利が入れ替わることがあったり、チャンスが変わったりとなることは、ゲームそのものを壊しかねないと感じます。

正しい判定のためのVARであるのですが、それがサッカーのゲームを壊してしまうとなってしまうことは、サッカーというゲームを変えてしまいかねないものになっています。

それが善か悪かという判断は、結局のところ運用する人に委ねられるわけで、では見える側の審判と見られない側の審判との関係をどうするかなど、非常に難しいものになってしまいかねません。

もう一点最後に言えるとしたなら、見える側の審判の質が今以上に問われることになりそうな、そんな気がしています。

審判としての引き出しの多さ

東京都のアクティブレフェリーとして20年近くが経とうとしていますが、長い間よくやらせていただいたものだと思っています。
(誰だ2級に上がれなかっただろうというのは!w・・・まあ問題児だしねえw)

そうした中で東京都からの割当以外も含んで、相当な公式戦をこなすなかで、いろいろな事象が起こるのです。

そのいろいろな事象というのが自分の中で特に大きなインシデントとなる場合には、その後の引き出しにつながっていることが多いと感じます。

例えば、けが人が出たときの対応があったとして、どういう判断をするのか、レフェリーとの連携は?四審との連携は?などなどをこなしながら、ベンチのコントロールを行い、もしかしたら担架対応になるかもしれない・・・と、さまざまな可能性を考えながら、優先事項と作業を整理していくことになります。

もちろん私も初めての時にはあせってしまうことがあったのですが、表面上はあまり出さないようにして、こなしてくることが多かったのですが、最近はまず顔にも出ませんし広く視野を保つことができているため、自分が主審の時であろうと、副審であろうと、その整理は素早く行うことができるようになっています。

それでも初めてのことは起こることがありますし、さらには競技規則改正によって新たに発生する事象があったりなどと、審判というのは一度も同じ現場というのがありません。

これでも何百試合という公式戦をやってきてもそうなのですから、その経験を後輩たちに生かしてもらうためには、今後も現場に足を運んで伝えていく必要があると思っています。

私も失敗をしたこともありますが、それをどうリカバリするかで変えることができるようになってきましたが、それは何百試合に対しての引き出しが数多くなったからだと理解をしています。

現役レフェリーとしてはもう少し続けていくことになりそうですので、さらに引き出しを多くしていこうと思います。

まず審判をやってみましょう

大人になってから審判を始める多くの方々は、お子さんがサッカーを始めたからという理由でという方が多いと思います。

私はそうではないスタートなのですが、審判仲間の多くにはそういう方がいっぱいいらっしゃっていて、そういう方がU-12年代を支えているのだと感じています。

多くはお父さん審判とかけもちだったり、チームとして審判が必要だから止む無く4級審判員を取得して子供のために仕方がなく審判をしているというのが実情だと思います。

しかし、それはたいへん貴重な経験であり、子供たちの成長の一翼を担っているのです。

でしたらぜひ、もう少しだけやってみませんか?と思うのです。

審判資格を取って真剣にはじめると最初の壁にぶちあたります。

それは「ジャッジする」ということになります。

走るのはまあ30代から40代前半ですから子供よりは走ることができるでしょうから、ジャッジ・・・つまり判断をゆだねられるということに慣れていないこと、競技規則をきっちり頭に入れていないことにより、ジャッジができないという方を見ます。

確かに倒された、足で蹴った、こういう場合は・・・と、笛は吹くけれども再開方法がわからない、果たしてこのタイミングで笛を吹いていいのかわからないというのが次々と起こり、そのまま流してしまってベンチからは「何やってるんだよ!」と言われたり・・・どんどんやる気をなくしていくことでしょう。

しかし、そこにめげずに競技規則を開いてみると、そこには「正しいこと」が書かれているのです。

こういう状況では何をしたらよいのか、どう対処するのか、ファウルであっても攻撃側が有利なら・・・などなど、実は競技規則の後ろの方にはそうした参考事例が多く載っているのです。

あとは、他の・・・特に先輩審判のジャッジする姿を多く見ることが参考になると思います。

子供たちへの声かけ、ファウルへのきちんとした対応、違反をおこした競技者への注意、ファウルを受けた競技者との対話・・・などなど、いろいろなものを目撃することになると思います。

その一つでいいから、次の試合であなたが重点項目を設けてやってみることが審判としての次のステップとなります。

私は主にU-15以上の審判をしているため(主戦場はやっぱり一種[大学、社会人]、二種[高校年代]ですし)、実はグリーンカードなるものは数年前まで出したことがなかったのですが、地元のフェスティバルでU-12を担当させていただくことがあり、その際に小学校2年生の競技者にグリーンカードを出したことがあります。

初めての経験でしたがその照れた笑顔にその競技者の未来が少し明るさが増したのと、周囲の「よかったねぇ~誉められたよ」という自信になる言葉が彼を成長させる小さなきっかけになったと感じています。

こういうのも別の現場で見ていたからこそやらなければいけないと思った次第ですし、U-12年代特有の誉めて伸ばすという部分で必要なものであると思ったのです。

これは先ほど書いた他の審判を見て学んだものであり、いつかやってみよう(U-12の経験は少ないので次というよりはいつか)となった結果からの回答であり学びの中から得たものとなります。

審判をやっていくに従い、正しいジャッジなどを求められていきます。

しかし、最初からすべてを求められるのはまた違うことだと思います。

そのためにU-12年代はそれぞれの年齢で区切られており、その年代ごとに審判のレベルを上げていくことができればいいのだと思います。

極端な話、お父さん審判が自分の子供が6年生になった時、「かっこいいお父さん審判」となることができれば大成功だと思うのです。

さらには上を目指したくなれば、お父さん審判から1級審判員になった人もいます。

そこまで最初から目指す必要はないかもしれませんが、お父さんとしてピッチに立つのですから、子供たちの成長のためにも競技規則を学び、他の人から学び、選手たちから学んで審判としての質を高めていっていただきたいと願います。