カテゴリー: 審判のつぶやき

審判インストラクター

この4月1日より、工藤が審判インストラクターとして活動するチャンスをいただきました。

台東区サッカー連盟より推薦をいただき、東京都サッカー協会審判委員会インストラクター部に所属します。

長くS3級アクティブレフェリーを東京都サッカー連盟でさせていただいた関係で、インストラクターの方々と接する機会が多く、そして自分が若者をプレイヤーとして育てることをしていたわけですが、グラスルーツという根本に戻って考えてみると、審判の育成がいかに重要かとこの数年思うようになってきました。

台東区でもお父さんレフェリーがたくさん生まれており、そうした方々が「どうやって審判を学んだらいいかわからない」などという声も聞かれておりました。

またジュニアユースを卒団した選手たちの中から、本格的に審判を目指したいという若者もでてきたこともあり、この二年でインストラクターを目指すということを目標としてきました。

先日、合格通知をいただき、そうした審判育成のチャンスをいただきました。

私は上級のサッカー審判資格がありませんので、当然ながら「将来Jリーグ」などということはありません。
しかし、そこに全く悲観をしておらず、むしろ市井にあってこそできる育成、最底辺での育成ということができると考えています。

よく、アクティブレフェリー審判研修会などで言われることですが、「みんな飯田惇平(国際主審)を目指しているけれども、今すぐなれるわけではない。むしろ彼の姿勢を学んでいかなければならない。」というものです。

何が言いたいかと言えば、飯田さんもいきなり1級レフェリーになったのではなく、S4級を取得し、S3級で東京都アクティブを経験し、そして関東S2からS1へと上がり今に至っているのです。

彼のS4、S3の時にインストラクターからどう学んだのか、どう考えたのか、そしてどう行動したのかというのが重要であって、これは若い時にしかできないこととなるのです。

なにせ現在51歳の私がS1を目指すなんてのはほぼ(というか間違いなくといっていい)ないわけで、つまりは若い時に(ぎりぎり30歳くらいまではなんとかチャンスはあるかも)行動を起こさねば、Jリーグの審判というのは難しいのです。

そこを目指したい若者に、最初に接するのがS3級の審判インストラクターというわけで、この最初にかかわる人が重要なのだと考えています。

そりゃJリーグをアセスメントする人であったり、チェックをするような方は審判としても、インストラクターとしても圧倒的に優秀なのですが、しかし私のように最底辺にいて、そこから審判を育てるチャンスというのは彼らには少ないことになります。

私はそのチャンスを生かすことのできるよう、まずは新米インストラクターとして学び、協会からOKをもらえるような状況の中で若者や新米レフェリーに伝えることができればと思っています。

ここに至るまで、東京都サッカー協会の先輩方、台東区サッカー連盟の関係各位には多大なるご協力をいただきました。

しかし、ようやく新米インストラクターとなるわけですので、これからがもっと学ぶべきものが増えてくると考えています。

その意味においてまだまだ若輩であるため、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

私が審判をやっている理由

私は現在、東京都サッカー協会のS3アクティブレフェリーをさせていただいています。

しかし、そこに至るにはさまざまなことがあったからで、結果として私はこの道に来たことが一つの正解なんだなと思っています。

そもそも審判を「しなくてはならなくなった」のは、二十歳の時に初めてコーチをさせていただいた時に、審判がいないからやらざるを得なかったというわけです。

当時は地域リーグで選手として世話になっていたのですが、チームでは審判がいらないため安心していたら、指導の方で必要だったというオチのようなものでした。

しかし、私は選手たちのことを考え…というきれいごとは置いといて、自分が選手としてフィールドに立っているときに、走りもしない、ジャッジもまともにできない主審では、私が納得しないな~と思ったからこそ、自分が審判となったときには必死で走り、拙くとも真剣に審判をやったことがスタートでした。

おかげで、少年サッカー大会の札幌市の笛を吹かせてもらったりしたわけですが、実は楽しんでやっていませんでした(笑)

その後12年ほどプレーヤーとしてそこそこのレベルでさせていただいていました。

そして転機となったのは長女誕生でした。

それまでサッカーをプレーヤーとして真剣に取り組んできたのを、少し和らげようと都リーグ三部のチームに入団して、平日練習や毎週の練習試合というものから離れたのです。

ところが都リーグでは、選手が審判をやらざるを得ない状態のため、すぐに審判をとり、主審になるにはS3が必要だということで、半年後に取得したのです。

思えばこのとき、審判委員会の人から上を目指さないか?と声をかけていただいていたのですが、やっていたらどうなっていたでしょう^^;

とまあ、架空の話はなしで…

それから自分達でチームを作り、運営するには審判資格が必要でした。

ずっとコーチもさせていただいていたのですが、そちらは審判をせずに来ていたので、審判の重要性をないがしろにしていたのかもしれません。

そこにまた転機が訪れます。

ある試合であまりにもひどいレフェリーに出会ったのです。

センターサークル審判法とでもいいましょうか、どうやったって見えないペナルティーエリア内のファウルまでセンターサークルから吹くのです。

そして最悪の事態が起こります。

ゴールキーパーをしていた(ゴールキーパーが一人でしたので、休むと経験のある私になるわけです)私が相手競技者に、ジャンプをしてキャッチする際、故意でかつ過剰に飛ばされて骨折をしたのです。

当然ながら退場となるプレーに対して、主審は歩いてやってきた上、注意だけでとどめるということをしたのです。
この時に痛いほど自分がサッカーをやっている環境を意識させられ、今でいうグラスルーツまで、審判のレベルを上げなければと感じた瞬間でした。

そこから自分の審判のレベルを上げるための努力をスタートさせ、東京都にアクティブレフェリー制度があることを知り登録しました。

その後、葛飾区連盟の当時の審判部長に良くしていただきながらも、残念ながら少年部からスポイルされました。

しかし、台東区連盟に社会人チームが参戦していた関係で、葛飾でいらないならうちがもらう!と台東区の理事長からお声かけいただき、いまは副部長という立場で関係させていただいています。

今でも審判だけをやりたいか?と問われれば「否」と答えるでしょう(笑)

私はサッカーに関わっていたいわけで、その中での審判の比重が大きくなっただけです。

そして、その活動を通して思ったのは、レフェリーとして上を目指す若者をグラスルーツからサポートしていきたいことと、グラスルーツだからこそきちんとしておきたいことを考え、台東区連盟から推薦をいただきレフェリーインストラクターを目指すことにしました。

これらは全てサッカーのためだと思っています。

プレーすることも、コーチすることもやめることはありませんが、多分他の方と違うのは審判にそれなりに力を入れている部分が多いということなのだと思っています。

たぶん他の方からみると相当審判に力を入れているように見えるかもしれませんが、私にとってはサッカーの一部で力を入れている部分ということなのです。

それもこれも全て、サッカーを楽しむためというのは言うまでもありません。

レフェリーは一人

公式戦にはレフェリーが最低一人必要になります。

少年で8人制の場合にはレフェリーのみ、それ以外ではアシスタントレフェリーを2名任命することができます(できますというのは競技規則の第6条副審の最初に書いてあるからです)。

そしてそのレフェリーの権限とは試合の結果を含めて最終決定となります。

実はレフェリーとはそれくらい重い決定権を持っていることになるわけです。

では、保護者の方がお子さんの公式戦の試合を見ていて、「なんだよあの審判!」と思ったことはありますか?

ほとんどの方がきっとあると思います。

その程度の大小はさまざまあるかもしれませんが、自分の子供のチームに不利な笛を吹かれたときに、きっと同じようなことを思うことでしょう。

しかし、審判を守る立場から言えば、主審の権限とは大きいことと、それを背負うという責任があるため、かなり大変なことになるのです。

ですからもしそのジャッジに対して「なんだよ!」と思ったとしても、それをぐっとこらえて「選手たちのために頑張っているんだ」と考えてください。

しかし審判のみなさんにも覚えておいていただきたいことがあります。

きっとさまざまな理由でそこにいるのだという事情はお察しいたします。

お父さんコーチで人がいないので仕方がなく立っている方もいるでしょう。

若手で審判の経験を積みたいがために立っている方もいるでしょう。

そして、もしかしたら周りから審判活動が好きだと思われて、実は好きではなく使命感で立っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
(といいながら、それを楽しみ始めている私のような者もいます)

どんな理由で主審になったのかは問いません。

目の前の試合に精いっぱい取り組んでください。

そして、その試合を見ている人はいるのだということを覚えておいてください。

例えば服装や姿勢です。

選手がびしっと直立しているというのに、審判がだらしがなく挨拶をしてみたり、ショーツのひもを外側に出してぶらぶらさせてみたり、襟も互い違いでだらしがなく見えたとして、それを選手だけではなく選手の保護者やベンチの監督やコーチも見ています。

そのレフェリーが素晴らしいジャッジをしたとしても、たいていの人はその素晴らしいジャッジよりもだらしがなさの方を記憶してしまいます。

人の記憶であったり思いというのはそういうもので、背筋をピシッと伸ばしてキビキビとジャッジして、たまにミスがあったとしても、「頑張っているんだな」と感じられるような人であれば、ある意味少々のミスは「プロじゃないんだから仕方がない」と思ってくれる人が大多数です。

逆にそれでジャッジも観客の中で合格点であったなら「今日の審判はよかったね」ということになります。

つまりは「姿勢」というのがとても大切だということなのです。

そして、その試合に真剣に取り組んでいましたか?

ジャッジをする時の手をピシッと伸ばしていましたか?

フリーキックの場所を示す時に、ジョグではなくて歩いてやっていませんか?

そこを少しずつ変えてみれば、きっと観客からも選手からも最大のリスペクトをされると思っています。

お父さんコーチの中にも仕方がなくやっている人もいることでしょう。

しかし、あなたの子供がどこかの審判のお世話になっているように、あなたもレフェリーとなった時、そこに選手や監督、コーチ、観客は見ているのです。

そこでクレームをつけられたり、罵声を浴びせられることもあるでしょう。

ですが、それはきっとあなたのジャッジや姿勢が足りないと見られているのです。

そして、そこに「無償ボランティアだから」という甘えは捨ててください。

これはコーチとしてもそうなのですが、有償であれ無償であれ育成にはアマチュアリズムの甘えはできません。

「指導でうちのチームはここまでしかできない」というのはわかりますが、やらねばならないことというのはレフェリーは競技規則で定められているわけですから、その部分は満たしてもらわなくてはなりません。

それだけの責任を指導者としてもレフェリーとしても持っているのです。

そして、その覚悟がないのであれば、私はどうするべきなのかを、チームスタッフと相談して決めてほしいと思っています。