服装の悲劇に泣いたイランのなでしこ – NEWS WEEK 日本版
国際サッカー連盟がイラン女子チームの12年ロンドン五輪予選への出場を禁止。試合中のスカーフ着用が規則違反と言うが……
2011年09月07日(水)15時16分
ババク・デガンピシェ(ベイルート支局長)
理不尽 オリンピック出場資格がないと言い渡されたイラン代表選手たち Ali Jarekji-Reuters
[2011年8月 3日号掲載]6月3日、アンマン(ヨルダン)のスタジアム。女子サッカーのイラン代表チームの面々がピッチに姿を現した。12年のロンドン・オリンピック出場を目指して、8カ月にわたり過酷なトレーニングを積んできた。この日のヨルダン戦は、アジア2次予選の重要な第1試合だった。
選手たちのユニホームは、長袖シャツに長ズボン、そしてヒジャブ(頭から首を覆うスカーフ)。イスラム教の伝統に従った保守的な服装だ。
国歌演奏が終わると、審判が突然宣言した──イランのユニホームはFIFA(国際サッカー連盟)の規定に違反しており、出場資格がない、と。
この瞬間、オリンピックの夢が断たれた。数人の選手は茫然とピッチに膝をつき、泣き始めた。「愕然とした」と、キャプテンのニルーファー・アルダラン(25)は本誌に語った。「落胆を隠そうにも隠せなかった」
事件は大きな波紋を生んだ。接触プレーの際に首が絞まる危険があるのでヒジャブ禁止は妥当だとFIFAは言うが、人種差別的・性差別的だとの批判が上がっている。この措置によりイスラム教徒の女子選手全般の出場資格が奪われかねない。
イランの女子サッカー選手は、これまでも十分過ぎるほどの障害にぶつかってきた。この国の女性は、公の場で髪の毛と首、腕、脚を露出することが法律上許されておらず、保守派は公衆の面前で女性がスポーツをすることすら認めてこなかった。
長年の働き掛けの結果、05年にようやく女子サッカー代表チームが結成されたが、女性スポーツ選手への逆風はやんでいない。イランの高位の宗教指導者であるアリ・サフィ・ゴルパイエガニは昨年、スポーツで女子選手がメダルを取るのはある種の「恥」だと言っている。
それでも、女子サッカー選手たちは努力を続けてきた。キャプテンのアルダランは、サッカーに囲まれて育った。父親は代表チームのゴールキーパーだった。フットサル(室内サッカー)をプレーし始めたのは14歳のときだ。「サッカーは私のDNAの一部。ほかのことをするなんて考えもつかない」
豊かな才能はすぐに注目を集めた。09年、アブダビのクラブチームから移籍の誘いを受けた。提示された年俸は15万㌦といわれる。イランのチームより格段に高い金額だし、中東の女子選手としては破格の条件だ。
対イランの政治的陰謀?
しかし、アルダランは移籍話を断った。最大の問題は、ヒジャブだった。アブダビのチームはヒジャブなしでプレーすることを望んだが、その要求に従えばイランの代表チームに招集されなくなる恐れがあったのだ。
ミッドフィルダーのフェレシュテ・カリミ(22)が育った環境は、アルダランと対照的だった。「私の一家は、スポーツより文化や芸術を好む傾向が強い」と、カリミは言う。「私だけ変わり種だった」
10代でフットサルを始めたのをきっかけにサッカーの世界に入ったカリミは、イラン屈指のプレーヤーに成長した。09年にパキスタンで開かれた大会では、4試合でハットトリック(1試合で3得点)を達成した。
実は、FIFAとイラン・サッカー協会がユニホームをめぐって対立するのは、今回が初めてではない。昨年のユースオリンピックでも、当初はイランの出場が阻まれた。当時は結局、イランがユニホームを修正することで出場を許された。「あのときは私たちが折れたのだから、今度は(FIFAが)妥協する番」だと、カリミは言う。
しかもFIFAは、3月のオリンピック1次予選では修正版のユニフォームで出場を認めていた。それだけに、今回の判断は大きな衝撃を与えた。「サッカーはすべての人のものだと、FIFAは言う」と、アルダランは言う。「けれど、イスラム教徒の女性にも門戸が開かれているのか疑問に感じる」
今回の事件にはサッカー以外の要因が関係しているとみる向きもある。問題の試合でマッチコミッショナー(試合を監督・運営する現場の最高責任者)を務めたバーレーン人が政治的な理由でイランをおとしめようとしたと、イラン・サッカー協会のアリ・カファシアン会長は言う。イランがバーレーンでの反体制による抗議活動を支援していることが影響したというのだ。
決着の見通しは立たず
しかしイラン代表チームの面々によれば、マッチコミッショナーは心から同情してくれたという。むしろ、ジョセフ・ブラッターFIFA会長の意向が働いたとの見方が多い。ブラッターは過去にも、女子は「もっと女性らしいユニホーム」と「もっとぴちぴちのショートパンツ」を着るべきだと、性差別的な発言をしたことがある。
FIFAはユニホーム事件を大問題と見なさない姿勢を取っているが、動揺していることは間違いない。「非常に微妙な問題だ」と、ある広報担当者は言う(この問題について発言したことを知られたくないとの理由で匿名を希望)。
今回の騒動は、女子サッカー界最大のイベントであるワールドカップ(ドイツ大会)の開幕直前に持ち上がった。カリミは試合のテレビ中継を食い入るように見た。「あの場に立って、このユニホームでもプレーに支障がないと実証したかった」
現時点で、ユニホーム論争に決着がつく見通しは立っていない。双方ともに引き下がるつもりはなさそうだ。
アルダランは深く落胆しているが、せめて明るい材料を見つけようと努めている。「女にもサッカーができるんだって、イランの男たちにも分かったことは、少なくとも朗報ね」
このイラン女子代表の服装問題は、実は昨年から「このユニフォームはだめだ」となっていました。
オリンピック予選に出しませんよとFIFAが言っていたにもかかわらず、イラン女子代表は強行したのですから失格を言い渡されても仕方がありません。
そもそも宗教的な理由であろうとなんであろうと、サッカーの規則を破ることは許されません。
ましてサッカーとは英国ではじまり、欧州、南米で特に盛んなスポーツであり、その規則の下で発展してきたわけです。
ですからイランのルールに・・・というのは間違いであり、サッカーのルールに従わなければなりません。
例えば、サッカーでは裸足で競技をすることができません。
これはルールにあり「怪我を防止するため」の措置であるのは明確になっています。
しかしある部族出身の裸足でやたらと上手なサッカー選手が「おらの村の文化には靴をはく習慣がないから裸足での出場を認めろ」と言っていたとして、当然ながらこれは出場を認められないわけで、出場をさせてしまえば主審が問われることになります。
イランの伝統でヒジャブを国内でつけるのは結構ですが、その他の国やスポーツなどでそれらを押し通すことは傲慢でしかありません。
またルールのあるスポーツでは規則を破ってまでやる必要はありません。
そもそもムスリムの戒律で女性がこうした扱いをされることに関してどうこう言うことはありませんが、文中赤く示した部分のとおりの発言を公人がしても何ら国内では問われることがないのです。
イランをイランとして尊重はしますが、それは国際マッチなどで通用するものではありません。
◇
ブログがご無沙汰となってしまいました。
いろいろとトップチームや来年度の方向などがあるため書いて行きたいのですが、周りから「まだ早い!」とか言われて書くことができません(笑)
いまもいろいろネタはあるのですが・・・内緒です^^;
ルール=絶対 という観点は一理以上のものがあります。
が、同年の3月の一次予選では、FIFAがユニフォームとヒジャブの改善案を示し、イラン側が全面的に従うという形で、決着を見たはずで、
二次予選寸前(時期は不確定ですが、試合の数日前らしい)に、「このユニを着ればOKと言ったな。あれは嘘だ。頭の変な布取って、ハーフパンツに変えろ」と言われても、時間的にも精神的にも新ユニを準備できません。
ルールはもちろん厳守されることが大前提ですが、
理不尽なルールと闘うということがなければ、そもそもサッカーもラグビーも生まれなかったのでは?
fgさん
コメントありがとうございます。
そもそもあるルールに対して、別のものを取り扱うことが問題だと思うため、その意味ではもし「完全に決着を見た」というのであればFIFAにも責められる点があると感じます。
ただしイランに限らず、フットボールに対して参入しようとするのであれば、異文化だということを理解して従うべきだと思っています。
※その意味で今の国際柔道はJudoであって柔道ではなくなっていると感じます
フットボールの特性を考えれば、シャツとショーツ以外のものは危険でしかありませんし、宗教的な問題があったとしても、やはり異文化のものを受け入れるのであれば従うしかないと感じます。
もちろんムスリムの世界に対してチャレンジするのであれば、イスラムの教えに従うのは当然だと思っています。